今度はあなたからプロポーズして









「それでは、頼みますよ。」




先方の部長に再度念を押されると




「今後このような事がないよう
 指導してまいりますので…」




と恭一はもう一度頭を下げてから
応接室のドアを閉めた。




武田はしきりに謝ってきたが
こういう時こそ上司がその威厳を
保つ場だと恭一は心得ていた。




「まぁ、そう気にするなよ。
 何度も失敗されちゃ困るけど、
 これを教訓に、
 これから頑張ればいいだけだ」




と追い込むではなく
掛ける言葉に激励の意を込めた。




俯く武田に
駆け出しの頃の自分が重なって
ふと懐かしさが込み上げる。




恭一は武田の肩を軽く叩きながら
ちょうど来たエレベーターに
サッと乗り込んだ。






二人が乗り込んだエレベーターは
土曜とはいえ
スーツ姿のサラリーマン達で埋め
つくされていた。




皆、
家族を犠牲にしてるのだろうか?




下っていくフロアランプをジッと
眺めながら、
恭一はふと思った。




その胸中に
先程の留美が再び問いかける。








「わたしと仕事、
 どっちが大事なの?」







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