今度はあなたからプロポーズして









わしは
頭を石でぶたれたかのような
衝撃を受けたが、




考えてみれば、
それは当然のことでもあった。




当時はお見合いで
結婚相手を見つけるのが
主流の時代で、




ましてや春江は良家の娘だ。
しかも、美人ときている。




変な虫がつく前に
良縁の話が持ち上がっても
不思議ではなかった。







勝手に納得しているわしを
横目に見ながら
春江は黙ったまま、
わしの返事を待っていた。





手が止まったわしのスケッチブックが
秋を知らせる風に吹かれて、
パラパラと捲れていく。






春江が待っているであろう返事が
出かかった瞬間、
わしは
自分の意思とは逆の言葉を発した。









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