hb-ふたりで描いた笑顔-
いない、きらい
幼稚園の頃、ブランコが大好きだった。父親が背中を押してくれて、すごいところまで僕を運んでくれた。でも、いつしか背中を押してもらえなくなった。代わりに母親が背中を押してくれるようになった。でも、すぐになくなった。叔母さんが言うにはどこか遠くに行ってしまったって話だ。幼かった僕には意味がわからない。なんで僕を置いて行くのか?きっと母さんは僕が嫌いになったのだろう。それでも僕は母さんを嫌いにはなれない。ただ、ブランコは嫌いになった。

涙はいったい体の中にどれくらい入っているのだろう。毎日、毎日、僕は泣いているのに涙はなくならない。僕は考えていた。涙がなくなれば、母さんがいなくなった悲しさもなくなるって。でも、涙がいつまで経ってもなくならないから、僕の中から悲しさがなくならなかった。
<お母さん・・・。>
< 1 / 61 >

この作品をシェア

pagetop