hb-ふたりで描いた笑顔-
巡り会い
その老婆は困っていた。街を行き交う人たちは、その老婆を見て見ぬ振りだ。だから、狼狽し、困惑していた。
「どうしましょう・・・。」
品の良さが災いしていた。なかなか助けを求められずにいた。
「あ、あの・・・。」
声をかけようとしても、都会の速さに馴染めない。あっという間に通り過ぎていってしまう。
「都会の人はせっかちね。」
老婆は地方から息子を訪ねて来たのだった。それも内緒でだ。今日は孫の誕生日だった。驚かそうとしたのが良くなかった。駅までは問題がなかったが、そこからどうしていいかわからない。
「どうしましょう・・・。」
右手を頬にやり、考え込んでいた。
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