hb-ふたりで描いた笑顔-
小さな流れ
ベッドに倒れ込んだ。それくらいに精神的に堪えた。家に着くなり、美喜はベッドに倒れ込むしかなかった。
「疲れた・・・。」
正直な感想だ。今までも記憶がないが故に、いろいろと疲れる事はあった。しかし、今日の疲れはそれ以上だった。
「家族か・・・。」
ぽっかりと穴が空いている。
「本当に家族なのかな?」
後悔していた。毎日、今日のような時間が続いていくのだ。それは自分が言い出した事だ。本当に良かったのだろうか。そこには不安しかない。
不安を拭おうとしたのか、美喜は受け取ったアルバムを開いた。さっきは気がつかなかったが、幸男の笑顔は不思議だ。何か感じるものがある。一見、普通の笑顔にしか見えない。しかし訴えてくるのだ。幸福感、充実感・・・。見ていると自分も思わず微笑んでしまう。
「不思議ね。癒される。」
幸男と会っていた時にはなかった感情だ。
また、ページをめくる。ちょうど入園式の写真があった。隣には自分の姿がある。
「ここにいる私は何を想っていたのかな?」
そんな事を考える。そして、ページをめくる。
ここにある写真は、つい最近の写真だった。
「あれ?」
笑顔が違う。どこが違うと聞かれても困るが、何かが違うのはわかる。
「なんで?」
頭に軽い痛みが走る。同時に記憶も走る。幸男の声が聞こえてくる。「お母さん、お母さん、お母さん・・・。」自分を探している。涙が溢れ出てきた。
「幸男君・・・。」
バッグを探り、中から携帯を取り出した。
「もしもし・・・。すみません。聞きたいことがあるんです。」
相手が出るや否や話し始めた。
「な、どうしたの、急に?姉さん・・・。」
「教えてもらいたいの。すぐに、教えてもらいたいの。」
「何を?」
「幸男君の、幸男君の誕生日はいつ?」
「さ、三月一日だけど。それがどうかしたの?」
「やっぱり・・・。ごめん、ありがとう。」
そう言って唐突に電話を切った。
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