キミ色
駅から降り走って「MiLky」まで行き扉を開けると、店内を掃除している泉さんと目が合った。



「…こんちは─…」



気まずく小さい声でそう言うと、泉さんは何もかも解ったような顔をして笑った。


「美波さん、奥。」


小さい声でそう言って奥の扉を指差す泉さん。
俺は泉さんに少し頭を下げると、扉まで移動した。


ゆっくりとノブに手をかけ、回す。
勿論、素直に開く扉。



開かなかったらいいのに…
なんて瞬時に思っても開かない訳がない。



音が鳴らないようにゆっくりと開け中に入って行くと、確かにそこには座っている美波さんがいた。
美波さんの背中が俺の視界に入る。



「…美波さん、、、。」


声をかけるとぱっと美波さんはこっちを向いた。
手にはボールペンを持って…


「あ、櫂!!あんた、やっと来た!!!」



俺を見つけるとすぐ美波さんは立ち上がり、俺に近づいてきた。
その目は、どう見ても厳しい。



「5時に来れるっていうから、5時にしたんでしょ?昨日もギリギリだったし…、5時に間に合わないなら別に5時30でもいいって言ってるでしょ?!」



確かに美波さんの言う通りだ。
俺が5時に入るって決めたんだ、5時から入らないと金銭的に厳しくなってしまうから…。



でも、俺がここに着いたのは5時15分。
全て俺が悪い…。



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