キミ色
「……櫂?」



そうとう思い詰めてたのか、空羽が俺の顔をのぞいてきた。
その瞬間、何故か空羽が頭の中に映った。



空羽と時雨が―……



ジョウロから水が流れ…、雲の切れ間から陽が差し込む…―



…あーもう!!
ダメだ、何でこんなこと…



俺には、関係ないんだ。
なのに、あの光景がどうしてもちらつく…



「…――櫂?」



もう1度呼ばれたその声には、背を向けてしまった。



とてもじゃないけど、空羽を見れない…
振り向けない。



今の俺は何を言いだすか、解らない…
なんか、言ってはいけないことまで口走りそうで……




でもそんな想いを、空羽には悟られたくなかった。



「何でもないよ。お前、いい加減寝たら?」



そう言うと、空羽は何も言わずにタオルケットを肩までかけた。



不服そうな様子は、後ろからぱっと見ただけでも良く解る。




そんな空羽を見てられなくて、俺はシャワーを浴びにリビングを出た。





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