すべては数直線の上に+詩集
僕はベンチから立ち上がり、公園内を歩いた。
巨大なチューリップの滑り台の横を通りすぎ、無人の四つ並んだブランコに向かった。
ブランコに向かう間、僕の靴がそこらに生えていた雑草を踏み潰した。
雑草には申し訳ないのだが、そうしないことにはブランコまで辿り着けないのだ。
ブランコにたどりついた僕は、右から二番目のブランコに座り、そこから周りを見渡した。
公園の景色がさきほどベンチに座って見渡したときと何かが違っているように見えた。
座る場所が変わったせいだろうか...?

僕の右手には、この公園に不釣り合いな真新しいトイレと、二つ誰も座っていないブランコがある。
左手には無人のブランコが一つ。
さっきまで僕が腰かけていたベンチが正面に見える。
あの、ペンキの剥げているベンチだ。

僕とベンチの間にチューリップの滑り台。

遊具の位置は決して変わっていなかった。
それなのに、僕には何かがひっかかっている。
まるで違う角度から照明を当てた彫刻物のように。

そういえばさっきベンチに座って眺めていた時にも少し違和感を感じていた。

この公園のベンチに座るのも、こうしてブランコに腰かけるのも実に久しぶりだ。
懐かしさがドアを開けた胸に入り込んできた。

懐かしい景色...。

そうか...これは僕が子供の頃見ていた景色なんだ。
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