すべては数直線の上に+詩集
男はそんな感じの歌詞を英語で歌った。
歌い終わった後で、彼はユウタの目をじっと見つめた。
ユウタが何か言うのを待っているようだった。

ユウタが彼の前にたち、挨拶をした後、彼は少しだけ自分のことを話した。
年齢とか週に何回かこの場所で歌っていることとか。
その後でこう言った。
「昨日できたばかりの曲なんですが、聴いてもらえますか?」

「ぜひ」

とユウタが言うと、彼はギターに目をやりペグを回し慣れた手付きでチューニングを済ませた。
そしてふぅーっと深呼吸し、歌い始めた。
先ほどの歌詞だ。
英語だったのではっきりとは分からなかったが、たぶんそういう意味の歌詞だと思った。

終始マイナーコードが強く掻き鳴らされ、そのストロークは荒々しく、彼が何かに苛立っているように感じた。
そして歌う彼の声も、苛立ちを何かにぶつけるような叫びに近いものだった。

一言で言うと、とてもいいです。

歌い終わり、じっと見つめている彼に対してユウタはそう感想を伝えた。


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