すべては数直線の上に+詩集
それを聞いた彼は、ちょっと微笑み、そっか、ありがとうと言った。

実際、お世辞ではなくユウタは本当にその曲はすごいと感じた。
聞いていて鳥肌がたったくらいだ。
とても激しく、そしてとても悲しげな曲だった。
まだ歌の余韻が体に残っている。

「人間ってなんで生きてるんでしょうね?」

突然、彼がそう口にした。
それは自分への質問だろうか、とユウタは考えたがそうではないようだ。
彼がそのまま語り続けたからだ。

「人間ってなんで生きてるんでしょうね?最近ずっと考えてるんです。生きることに意味とか価値とか、そういうのはないように思えるんですよ。楽しい時ってそんなこと誰も考えたりしないんでしょうね...。やっぱり落ち込んでるからかなぁ、こんなこと考えるのは。」

「何かあったんですか?」

ユウタは彼に尋ねてみた。
彼の表情は、何か悲しいことでも思い出したように暗くなっていた。
そう見えたのは夜の暗さのせいであったのかもしれない。
彼の顔は陰になってあまりよく見えなかったから。
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