すべては数直線の上に+詩集
「でも高校時代ってまだ三年くらい前の話だよな?すごく懐かしい感じがするよな?」

高橋にそう言われ、確かに懐かしいと思った。
現に、僕は電話に出た高橋の声を懐かしいと感じたではないか。
そして電話中にも関わらず、懐かしく、竹内さんのことも思い出していたじゃんか。

「そういえばさ、竹内って大学どこに行ったんだっけ?」

僕はあれだけ竹内さんが好きで夢中だったくせに、竹内さんがどこに進学したのかを覚えていなかった。
人間の記憶なんてこんなもんさ。

高校三年の秋、教室には受験ムードがより一層強くなり、僕はそこにいると息苦しささえ感じた。
僕と高橋だけが相変わらずで、周りは10分の休み時間すら無駄にはすまい、というオーラを纏った友人たちがいた。
竹内さんもその一員だった。

そんな状況だから本格的な冬が顔を覗かせた11月の終わりに、僕と高橋が立て続けに竹内さんにフラれたのも当然と言えば当然のことだった。
僕が先に告白しフラれ、その一週間後に高橋がフラれた。
フラれ文句はピタッと一致した。

「今は受験に向けて頑張らなきゃいけないから…」

もっともだ。むしろ告白したことに罪悪感を覚えたくらいさ。

そうして教室のムードは、フラれた僕ら二人を置き去りにして受験戦争に突入していった。

僕と高橋は両手に持った日の丸の旗を大きく振りながら、戦場へと向かう友人たちを送り出した。

そんなはずはない。

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