すべては数直線の上に+詩集
「高橋だよ!高校三年の時に同じクラスだった高橋!」

高校三年の夏くらいだったかな。
いよいよ受験シーズン真っ盛りムードの教室の中、休み時間に僕と高橋は二人して、受験ムードなどお構いなしに好きな女の子の話題でよく喋っていた。
そして僕らは気が合うのか、好きな女の子は同じだった。
彼女はクラスでも比較的目立たない、どちらかというと地味な女の子だったが、僕は同じクラスになった四月から彼女のことが気になっていた。
僕の席は教室の一番後ろだったから、授業中は竹内さん、彼女の名前は竹内さんというのだが、の後ろ姿を眺めながら過ごした。
そのおかげで僕の成績は散々なものだったが、そんなこと僕にはどうでもいいことだった。
その時の僕には竹内さんしか見えていなかった。
そして竹内さんしか見えていなかった僕は、その年の冬にやっと現実が見え、自分が受験生であることを思いだし、なんとかギリギリ受かりそうな大学を受験し進学した。
たいして行きたくもない大学の、たいして興味もない学部だ。

「おーい、えびはらー!」

ん、誰かが僕の名前を呼んでいる。
誰だ?
もちろん電話の向こうの高橋だ、考えるまでもない。

「ごめん、ごめん!ちょっと懐かしいこと思い出してた」

「なんだよ、それ!どうせ竹内のことでも思い出してたんだろ?」

バレてるし。

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