運命に導かれて


羽衣は無言でコクンと首を縦に動かした。



「俺…羽衣みたいに純粋な生き方はしていないからこんな俺は羽衣には汚れたヤツに映るのかもしれない。信じてくれとは言わないがあれは無理やりだった。まぁどちらにせよ今までの行いの悪さは否定できないからな。」



苦笑をもらすルカ。その瞳は悲しみしか映していないようで、羽衣は胸がキュッと締めつけられるようだった。



―――ギュッ―――



一度は振りほどいたルカの腕を…いやルカ自身を、今度は羽衣が抱き締めた。



「あたしのほうこそごめんなさい。ショックで自分のことしか考えられなかった。ルカ様はちっとも汚れてなんていないですよ。あたしが眠るまでいつも撫でてくれるこの手はとっても綺麗でとっても優しかったから。」



もうすっかり涙がとまった羽衣は、泣き腫らした目を細めてふんわりと笑った。




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