【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
「わかったか?」


「…え………わからないです…」


「お前の目は節穴か。

自分の借金っ…ほんま…
しっかりしぃや」


「すみません…」


「そこに何て書いてある。
元金、利子、それから!」


「えっ?


…あっ、何ですか!?

謝礼金って…」


「そうやろ?聞いてない欄があったやろ。

それが落とし穴や。

甘い話しは無いゆうことや。
ここと一生付き合うんか?」


「そ、そんなぁ…」


「悪知恵はん、」


城頭八に呼ばれて、
中年男は、ビクリとなる。


「寄付金(謝礼金)は、毎月の無期限って書いてますねぇ。
金額は、借り入れ元金の同額、及び、年利は×借り入れ元金、
延滞金は×借り入れ元金」


「ひっ!?」


朝日喜は、目を丸くした。


「ひどいですなぁ~。

これじゃあ、人生蟻地獄でっせ、朝日喜はんっ

どうしますの」



「どないしたらえぇですか、城頭八さぁん…」


「幸いなことに、
朝日喜はんっ
はんこ押す前やないですかいな」


「ふぇっ!?
あっ、ほんまやっ

ほんまですわ~」


朝日喜は涙目で笑い狂った。


「恩にきれや~」


「すんません、すんません」


土下座をしだした朝日喜を横目に、
城頭八は、悪知恵を見据えた。


「ほなっ、失礼するさかい、

ワテの商売邪魔するなや。
次は、無いでっせ」


「今日は…虫の居所が良いのですか?」


「なんや?」


「あ、いいえ…」


「素人は相手にせんのや。

でも、もう調子に乗るなや。
目に余る素人は、
容赦せんぞ?


余計に金取ろうとしよって 素人がっ」


城頭八が立ち去り、
手下もついて去る。



朝日喜は、
危ないところで城頭八に救われ、
一目散にその場を後にした。


――――…
< 24 / 27 >

この作品をシェア

pagetop