heart to heart +love☆
本当は電話に出てくれるなんて思ってなくて、ちょっと驚いた。


「…もしもし?柚希?」

『…うん、なあに?』

「いや、元気かなと思ってさ」


声を聴く限り、あんまり元気なさそうなのは分かってた。

なのに、そんなセリフしか出てこない自分が嫌になる。

柚希は小さく“うん元気だよ”なんて言うけれど、明らかにウソだって分かる。


『ねぇ、律…?』

「ん、どうしたの?」

『怒ってる?』

「なにが?」

『今日の私の態度に』

「…怒ってないけど、その理由が知りたい。オレが悪かったなら謝るし…」

『違う…!そうじゃない…けど、ちょっと待って。待っててね?移動するから』


ケータイの向こうから、ペタペタと柚希のスリッパの足音が聞こえてくる。

それさえも愛しく思えるから、柚希の存在は摩訶不思議だ。


『もしもし?』


再び声が聞こえてきたときには、声がさっきよりもクリアに聞こえた。


『律が悪いとかじゃなくて…私の問題だから、誤解しないでね』

「どういうこと?」

『それはっ…』


しばらく沈黙が流れた。

何をためらってんだろう?

いろんな考えが廻ったけど、しっくりくるような答えは見つからなかった。

ようやく柚希が口を開く。


『……律に、弱いところを見られたくないから、だよ』

「は?」

『ホントは不安だし…検査だって、その結果だって、全部…』


いつもケロっとしてる柚希が、そんなことを言うとは思ってなかった。


『そういうとき、絶対に嫌なところが出るの。ワガママで、自分に甘くて、気分屋で』


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