Honey Bitter
「おい」
めんどくさそうな低い声が、私の後ろの階段近くから聞こえる。
「………、」
この高さじゃ、目が合うはずなんてないと思ったのに。あれは、やっぱり見間違いじゃ無かった。
自由になる手前、少なからず後悔したけど"関係ない"と言えばすぐに引いてくれるはずだろう。
世の中なんてそんな物だ。
大人だって子供だって、
皆、自分が一番可愛くて自分に被害が及ばないように日々生活しているんだから。
助けてと言えば"誰かが助けてくれる"なんてそんな甘い考えは随分と前に捨てた。
不機嫌丸出しな、声の主であろう、後ろの人物に視線を向ける。
「……………え、」