失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「君は薬物中毒治療の研究の被験者

として私が担当することになってる

どのみち私からは逃げられやしない

君は知ってるのか?覚醒剤の後遺症

や離脱症状の様々な危険性…治療法

…それを取り巻く日本の現状をだ」

「僕の担当って…てっきりあなたは

警察だと…違うの?」

僕は一番訊きたかった質問をした

「似たようなもんだ…俗にいう麻薬

Gメン…聞いたことあるだろう?…

麻薬取締官だ…これが私が腐れ縁の

友人との取り引きの結論だ…つまり

私のようなヤバい人間は殺すか囲い

込んで利用するかどちらかだからな

…まあ私を友人は殺せない…相討ち

になるように仕組んである…それが

腐れ縁と言われる理由なんだが…」




死に際まで逃げ道を準備してたんだ

すごい

僕はこの人の生き延びる執念に

多少尊敬の念すら覚えた

そしてこんな悪魔みたいな人を

国家権力に組み込める友達って…

その人もこの人と相討ちクラスって

自分が安全なのか

虎の穴に居るのかわからなくなるよ

「…そうだったね…薬は詳しかった

よね…」

思い出す

麻痺するような薬で身体を奪われて

僕を思い通りに操ってたこと

「専門が薬学だからこのキャリアが

可能なんだ…私自身が毒にも薬にも

なり得るとはね…人生は面白い」

「大学が薬学だったの?」

彼の謎が一つ解けた

「ああ…悪魔がたくさんいたぞ…変

態の巣窟だった…こんな権力の犬に

なるとは…我ながら堕落したもんだ

と思うが」

彼は大学の名前を教えてくれた

そっそれは…あの?

「えっ…本当に?」

「ああ…英語が話せる」

有名過ぎる海外のあの大学の名前に

僕は驚いた

「出るぞ…その前に君の傷口を洗う

か…」

確かに安心してそれは任せられる

「あ…ありがとう」

彼は無言で僕にシャワーをかけて

くれていた





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