失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

迷宮と羅針盤




翌日から個室に移されて

警察の事情聴取が始まった

身体の傷の写真を何枚も撮られた

針で突き刺された傷をさらされた

その局部を写真とMRIで撮られる

次第に心が折れそうになる



彼はその日は本部での会議で

付き添ってはくれなかった

昨日の帰り際には

後から来ると言ってくれたのだが…




傷の撮影で折れたあとの試練がくる

思い出したくもないあの夜のことを

吊るされて犯されて針で貫かれ

その後に死にかけたこと

事実を詳細に何度も訊かれる

関係者の顔写真を見せられ

吐きそうになる

だがその中に僕の知らない人もいた

そして僕はあの男の写真にだけ

嫌悪感を感じなかった



あのあとどうなったんだろう

最後にみたあの男は

警察に発砲していた

誰かを殺して逃げたのか

それとも逮捕されたんだろうか?

あの男を組織から解放してあげたい

逮捕されたほうがいい

そんなことを思っている自分に

少し驚いた



だが僕だって取り調べの結果では

覚醒剤や非合法な薬物の法律に

引っ掛かるんじゃないのかと

不安になる

それとも

ただの被害者で済まされるのか?

法律は全く詳しくない僕には

なにがどうなるのかは一切

わからなかった

彼に聞いてみるしかない

警察には怖くて聞けなかった






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