失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



そして取り調べは

その男との関係に移っていった

刑事がその写真を指さして言った

「この男とはいつ…どうやって出会

ったんだ?」

それは…

あの話をしなければならない

「…あの…僕に最初にクスリを飲ま

せた売人がいて…」

「それはどの人物だ?」

写真にない

「この中に…ありません」

名前を聞かれ答えた

「そうか…その売人とはどこで知り

あったの?」

また答えたくないことを訊かれる

「バイト先のライブハウスで…飲み

に誘われて…クスリを酒に混ぜてた

らしくて…気がついたときは意識が

飛んでいて…それから…何度も会っ

て…飲んでるうちに…中毒になって

いて…付き合うのが…やめられなく

なって…そのうち…もっと強いクス

リを入れられてて…もうその頃は…

言いなり…でした…」

「身体の関係は?」

答えたくない

下を向いて無言でいると

担当官が聞いてきた

「あったのかな?」

僕はうなだれたままうなづいた

「クスリを買うようになった?」

「いえ…買ったことはないです…い

つもその売人から…入れられて…ま

した」

「それから?」

「…客を…取らされて…ました」

「客って?ヤクの客?」

違う

「ヤクじゃ…ありません」

「ウリ…かな?」

もういやだ

また黙ってうなづくしかなかった





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