失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
CとF
思わぬ客がやってきた
それは親友のパンク野郎だった
僕のギターを持って
コンコンと小さなノックが聞こえた
昼過ぎに誰だろ
母さんかな
「よお」
聞き覚えのある声と共に
ヤツがドアから顔を覗かせた
「えっ!?」
「驚くなよ…そんな意外かよ」
意外…とかじゃなく
コイツには顔を合わせられない
というか顔向け出来ない
昼御飯のあとそのままの姿勢で
ベッドを上半分起こして寄りかかり
考えごとをしていたせいで
布団に潜りこむことも出来なかった
「あ…いや…えっ…と…」
ヤツはいつもの通り
遠慮なくベッドまで来た
肩に僕のギターケース
「ここ…座るぞ」
「あ…ああ…どうぞ」
「どうぞって…誰だよオレは」
ヤツはチッと舌打ちをした
壁ぎわにギターを置き
パイプ椅子を後ろ前に向け直して
それにまたがって座り
背もたれを抱きかかえた