失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



彼は彼女のコネで少し遠いけれど

待機者の少ない施設があるから

とりあえず待機者登録をしたという

状況や君の気持ちが変われば

いつでもキャンセル出来ると

彼は話してくれた

すぐに僕はセラピストの先生と

施設見学に行った



思ったより綺麗でも汚くもなく

所長も入寮者も男子のみ

(女性は専用の施設がある)

彼はまたヒステリーを起こすかな?

ちょっと心配だがきっとそんなこと

もう知っていて僕に勧めたんだろう

待機者は入れ替わりがよくある

1ヶ月以内には多分空きが出来る

そう所長は言った



見学を終わり彼女は僕に

"選択肢はないのよ"と言った

施設はどこもいっぱいで

入寮待ちもいっぱい

ここは入れ替わりが激しいから

こんな短い待機期間で入れるのよ

ここ以外あなたの受け入れ先はない

実家に帰れないなら…ね


ここが合わなかったら

あなたの「私にも話せない」悩みを

向き合って解消しないと病院に

逆戻りになるから

今いる病院には戻れないし

そこは腹を決めた方が良いわね…



僕は選択肢のない選択をした

ここしかないなら

ここに入ろう…と

それに

兄貴のいない実家の僕らの部屋は

たとえフラッシュバックがなくても

僕にはまだ辛すぎたから





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