失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




新しい興信所のことは

父が対応するようになった

仕事の合間や帰宅後に

連絡を取っているらしい



僕に黙って替えたのが

後ろめたかったのか意地か

それとも僕に信用がないのか

今度はほとんどこっちには話はなく

でも前の興信所が調査した資料は

そのまま引き継ぎで使っている

それが僕には唯一の救いだ

気分的にすこしマシ



それでも父親の極端さが頭に来る



喧嘩してる場合じゃないことは

お互い分かってるはずなのに

顔を合わせたくない

母が心配して時々電話してくる

「お父さんだって神様じゃないんだ

から…間違いもあるわよ」

「僕だって…神様じゃない」



まだ許せない

一緒に頑張ってくれた調査員の

彼のことも無能呼ばわりした

そのことも僕の怒りの原因だ





今夜も家で飲みつぶれる

建設的な安住の場はなくなった

そのかわりの退廃的な麻痺

皮肉なことに父の酒の量は減った

でも僕が替わりに飲んでるよ

酒量保存の法則ってあるのか?



少し痩せてきたような気がする

秋が深まっていく

心の空虚が疼いて苦しい






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