失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



男性はソファーから身体を起こし

彼の方に身を乗り出した

「この子を巻き込みたくはないだろ

う?…お前が生きているだけで快く

思わない輩がいる…死んだことにし

たのに日本にいると嗅ぎ付けてくる

…特に誰かさんはしつこいようだし

な…まあ当然と言えば当然だ…お前

の後ろには何人もの怨霊がいる…片

足はいわば脅しだ…奴等はお前を殺

すよりこの子を狙うだろうな…その

方がお前が苦しむのを知るからだ」

男性は苦々しい顔をした

「お前がこんな弱点を負う選択をし

たとはな…」

「弱点じゃない」

彼はフッと笑った

「支点だ」



泣きそうになった



男性は眉を上げた

「そりゃ申し訳ない…つまり覚悟は

出来ているってわけだ」

「ああ…」

「物分かりがいいな…驚いた」

「…行き先くらいは斡旋してもらえ

るんだろうな?」

「お前が気に入ればな」



彼はあっさりと

驚くほどあっさりと

ここからいなくなることを

受け入れた





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