失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
彼の父親はまた一つ息をついた
最も厳しい話は
この先だった
「あの女が自殺として誰かに葬られ
たあと…しばらくしてからある噂が
耳に入った…あの女は死んでいなか
った…いやあの女の幽霊が出た…そ
んな流言だ…ある政治家があの女の
死亡確認を警察の上部に依頼したと
か…何かが起きていたことはわかっ
た…誰かが彼女の振りをしてまた誰
かと取り引きをしていると…」
彼の父親は僕を見た
わかるよな?…という顔で
「……」
僕は思わず彼に目をやった
彼は両手の指を組んで
じっと目を閉じていたが
ゆっくり目を開けた
「それから先は私が話そう…当事者
の方が詳しいだろう」
怖い…聞きたくない
本能が逃避したがってる
だが僕の意識は逆に
一言も漏らさずすべてを知ることを
覚悟しているかのようだった