失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

別離のための助走




その日は何度も激しく抱かれた

疲れはてて身体も動かなくなり

夜に二人でシャワーを浴びたあと

リビングの奥の寝室のベッドの中で

彼は僕に添い寝しながら話し始めた




君の依存症はいつ始まったのかな

あまりにも幼いうちから始まった

家族との特殊な人間関係が原因

ということは誰が見ても明らかだが

なにかもっと深いところに

君が気づかない理由のようなものが

あるように感じる

それがなんだかはまだわからない

もし君が良ければ私に心理学的な

なんらかのアプローチを

この期間にさせてもらいたいと思う

君はこれから私と別れて

記憶を無くした兄さんと逢う

それは君にとって新たな試練の時だ

このままでは君がまた薬物依存に

戻る可能性は十分にあると言える

それも性的関係に引きずられながら

深みにハマる可能性が高い

特にゲイ社会は薬物が横行している

音楽業界もまたしかりだ

ニアミスの機会は君も増えるだろう

君の自我は弱い

弱さは両刃の剣だ

魂の声を聞くには良いが

他人に巻き込まれいいようにされる

私が君にしたように…だ





< 347 / 514 >

この作品をシェア

pagetop