失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



もう…どうにもならない

僕はあいつに呼び出され

客を取る

魂を人質にされて

身体は鎖でつながれて

獄から抜けられなくなった

クスリに操られて

見知らぬ男に嬲られても

よがり狂う犬だ



兄貴がさせられたこと

僕も…してる

一晩中乱暴に犯されて

血まみれになって

廃墟みたいに心が

風化して死んでも

終わりがない

無間地獄




兄貴

あれが地獄の始まりだったね

でも僕はここで

もう終わってしまうかも

知れない



もう…終わっても

いいか…な…



どうせそのうち

身体がダメになる

死神に刈られるのも

時間の問題かな

せめてアレの最中に

連れていって





僕はバイトを辞めた

身体を壊したと言った

店長は一瞬なにか言いかけ

残念だね…と言ってくれた

電話を切ったあと

僕は頭を抱えて布団の中で震えた



知ってるんだ

店長は

あれを知ってる





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