ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
一夜の真実
◇◇◇


突然の交際宣言に飲み会は大盛り上がりだった。

……約一名を除いて。


もちろんその一名はこの私。

狐につままれたとは、まさにこんな気分を言うだろう。


誰が? 誰の彼女だって?


飲み会は祝福ムードに包まれたまま終わり、もう誰も私のことを可哀相な女だって目で見なくなった。

婚約破棄の話題を誰も振らなくなった。


代わりに私達の馴れ初めを散々、質問責めにされて、水嶋はサラリとかわしたり、素直に同じ会社で働いてるんだって答えたりしてた。


「最初に再会したのはコーヒーショップで偶然だったんだけど。な?」

「う、うん」


な、と言われても。

それは多分真実なんだろうけど、私にはその記憶がない。


それより何より私達の間に付き合ってるなんて事実ないのになんで……。


もしかしてこれも私を助ける為に恋人役を買ってでてくれたんだろうか。

それともヨウコちゃんの追及から逃れるために利用されたんだろうか。


頭の中が疑問だらけでパンクしそうだった。

だから水嶋が二次会には出ずに「俺らはこれで」と皆に別れを告げたときも素直に従ってしまった。
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