紙ひこうき、
One.

美音、


 『ねえ、ママ。どうして耳が聞こえないの?』

子供ながら一生懸命、覚えた手話で問いかける。

 『大丈夫だからね、美音。きっと治るわ』

ママは微笑んでそう言った。

 『本当っ!? 嬉しい』

あたしは信じて、ただ信じて、
いつ治るかなって。
あたしも耳が聞こえるようになるんだって。
音が聞こえるんだ、音楽が聴けるんだって。


そうおもってたのにね。



 『美音さんの耳は…』

治る。ただその言葉を願って。

 『残念ですが、今の医学では…』

どうして?
ママは治るって言ったよね?

ただ、呆然としながら診察室を出たあたし。

 『ごめんね、ごめんなさい――…』

そう言ってママはあたしの前で泣き崩れた。




それからママは、まともに食事も食べれず、
倒れて、入院することになった。



それはあたしが小学4年生の頃のこと。




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