君ニ恋シテル
「そんな落ち込まないで大丈夫だって!ほんとにキスするわけじゃないんだから」

「うん…」

キスをするふりだと、逞くんは言っていた。


だけど…やっぱりイヤだよね。

するふりでも、絶対ショック受けちゃいそうだもん。


「ほら暗い顔しない!せっかく浴衣着ておめかししてるんだから」

亜紀ちゃんはそう言うとニコッと笑った。


「うん…そうだよね。亜紀ちゃんも浴衣似合ってるよ。なんか、みんな揃って浴衣っていいよね」

「ねー。逞とさゆもめっちゃ浴衣似合ってるし。さすがアイドル何でも着こなすねぇ」


ほんと、二人ともばっちり決まっている。

この前と同じように、変装のため逞くんはサングラス、沙弓ちゃんは伊達眼鏡をかけていた。


「さゆっ、綿あめ買ってきた!」

「逞っ!あんま勝手にうろちょろしないで」

頬を膨らます沙弓ちゃんに、ごめんと笑顔で謝る逞くん。


逞くんは自然と沙弓ちゃんの手を引き歩き出す。

そんな二人の姿を、私は羨ましく見つめていた。


「ラブラブだねー」

逞くんと沙弓ちゃんを見つめながら亜紀ちゃんがそう言うと、

「亜紀も綿あめ食べる?」

と、洋祐くん。


「うん!食べたーい!」

笑顔で答えると、洋祐くんは亜紀ちゃんの手を引き歩き出す。


亜紀ちゃんと洋祐くんもラブラブじゃん。

いいな…。


そんなことを思っていると…

「ふんっ。相変わらずバカップルね。人前でイチャイチャを見せつけないでほしいわ。ねえ、ゆうにゃん」

百合香ちゃんが不機嫌な声で言う。
おまけに舌打ちまでして。


「…あ、あはは。そうだね」

イチャイチャってわけでもない気がするけど…。

でも、やっぱり羨ましいな。

なんだかちょっぴり寂しい気分…。


そして…
< 466 / 679 >

この作品をシェア

pagetop