空を翔ける一筋の流れ星
奇跡　空を翔ける一筋の流れ星
「ちょっと、どういうこと？」


食堂に入ってきて俺を見つけて、近付いてくるなり耳元で怒鳴ってきた。

この光景を何も知らない人が見たら、俺たちは恋人同士で喧嘩でもしたのだろうと思うに違いない。

そう思われることなど分かりきっているが、それでも妃來は怒鳴ってきたのだ。

恐らく、いや確実に異変に気付いたのだろう。


「何が？」


「とぼけないで。

どうして、空ちゃんがいないのよ」


やはり、気付いたようだ。

もっとも、霊感があり、今まで空のことを見えていた妃來にとっては気付くのは当たり前というべきだろうか。


「何言ってんだよ。

空なら、ちゃんとここにいるだろう」


それでも、適当な場所を指差して誤魔化す。

しかし、その場所を見向きもしないで俺の向かいの席へと座り、勢いよくテーブルに両手をつけた。

その音が響き、隣のテーブルで昼食としていたグループの一人が、ちらりと横目でこちらを見てきた。


「こんなときに、くだらない冗談は言わないで」


こちらの目から逸らさずに、鋭く、力強い視線が、俺の好きないつもの妃來とは違い、小さく舌打ちをして下を向いてしまった。

こんな状況での二人きりは、正直も何もしんどいだけだ。

きっと、今の妃來には言い訳など通用しないし、何を言っても納得してくれないだろう。


「知るかよ、こっちが知りたいくらいだよ」


負け惜しみのような言葉だけを残し、妃來を見向きもせずに食器を下げてそのまま食堂を出た。
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