十†字†路
★裏十字路~第五章~

暗路7・介護記録~nostalgic~

いつからだろうか?
きっと彼女と出会ってから。

どうしてだろうか?
それは彼女が似ているから。

何故だろうか?
きっと彼女が不幸だから。

だからだろうか?
だからだろう。

妹の夢を度々見るようになったのは。

貧弱で病弱。
脆弱で衰弱。
弱者の中の弱者。
守らなくては生きていけない存在。

庇わないなんて無謀。
構わないなんて無理。

過保護も過保護。
保護を過ぎて更に保護。
こうでもしないと消えてしまいそうな存在。

存在が希薄で。
生命が希薄で。

生存が奇跡で。
在命が奇跡で。

だけど……
ワタシにとっては重く、大切で、かけがえの無い存在と生命だった。

かけがえの無いハズだった……

だけど、彼女に妹の面影を感じるということは、妹はかけがえのある存在なのだろうか?

代替の効く愛情なのだろうか?

妹が死んだから次は彼女、彼女が死んだら次は誰か、そうやって代替しても平気なモノなのか?

所詮ワタシの自己満足、救いたいというエゴだけでワタシがワタシを慰めているのだろうか?

不幸な人を救いたい、それは自分が幸福であることの証明だから。

上から人を見下す。
自身の方が上に立つ者として、不幸な人を下と定め、優越感に浸る。

つまりは自慰。
人を救うなんてことはそんなものなのか?

妹に寄せる想いはそんなものだったのか?
彼女を救いたいという思いはそんなものなのか?

自分自身の気持ちが理解できない。

ワタシは妹にどんな気持ちで接していたのか?
夢の中でワタシはいつもその想いに悩んでいた。

この夢はそんな介護記録。
かけがえの無いハズだった妹を、大切に大切に、ただ妹だけを愛した記録。

決して自己満足なんかじゃないと証明する為に、ワタシはこの記録を夢で見る。

それ自身が自己満足であるというのに……


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