十†字†路
彼女が居なくなり、そこにはルージュの着いたコーヒーカップだけが残された。

コーヒーカップ…
煙草の吸い殻…
伝票…

……ん?

「伝票……?」

テーブルに置かれた伝票を広げ、中の文字を確認する。

ブレンドコーヒー、
シーフードピッツァ、
シーザーサラダ、
イカスミパスタ、
チーズスフレ、
クランベリーパイ…
合計、さ…3300円…

い、いくら遅刻したからって…

「コレ…やっぱりワタシが払うんだよな…?」

いくらなんでも、食い過ぎだ…
太れ、太ってしまえ!

人が呪っているところに、店員が近付いてきた。

「お会計でしょうか?」
「…あ、えーと…」

さて、報われぬ者を救おうというが…
ワタシ自身の不幸は誰が救ってくれるのやら。

「お客様…?」
「あぁ、やっぱりコーヒーを一杯貰うよ」

席に再び座り、コーヒーを待つ。

コーヒーを飲んだら出かけよう。
空は晴れており、実にいい散歩日和だった。

「それにしても…」

通り雨が降ったのはいったいなんだったのか?
狐の嫁入りの様に、晴れてるクセに思いっきり降ってたな…

「不幸な誰かの不運な結果かな?」

クックックと笑いながら、コーヒーを飲んだ。
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