十†字†路
微笑んではいるが、まだ笑顔が堅い。
まだ少し緊張しているのだろう。

「あ…はい、大丈夫…です」
「そうか、よかった…」

そこで、
ふと、
世界が、
停止した。

視界はモノクロ。
しかし次第に、
色鮮やかに染まる。

視えたのは様々な不幸。
場所も、
景色も、
時代も、
世界も、
登場人物も、

無数に色々と様々。

そんな不幸達を、
長時間…視た。

体感時間は映画一本分ぐらい。
もの凄いスピードで流し読み。

まぁ不幸を視てる間は、そんなに現実時間は経過しないのだが…

今回は…
彼女の不幸は…長すぎる!

大きい不幸…
おみくじでいうところの大凶…いや、
それさえも超える。
超大凶。

ここまで、
不幸で、
不吉で、
不運で、
不明な、
そんな人間…存在しない。

つい先程会った篠森零、彼女すらコレほどではない。

至上最大で、
究極最高な、
完全なる不幸。

生きてる事が不思議な…
いや、
生きてることさえ不幸。
マトモに死ねない不幸。

人類が滅んでも、
彼女は生きるだろう。
孤独に悩み、
呪う相手さえいない、
嘆く声も届かない。

殺さず生かさずな、
最高最悪の不幸を、
彼女は抱え込んでいた…
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