夢の続きで逢えたら

贈り物


浩二たちと飲んでいた店は、地元からもそれほど遠くはなく、

三十分ほどで、公園に着いた。



走り疲れた僕は、一歩一歩ゆっくりと息を整えながら、

噴水へと向かった。




あれ?



人影がひとつ。



詩野だ。



「あの〜」

後ろから静かに声をかける。


「ごめんなさい。今日はもう――」


後ろを振り返り、

僕だと気付いた詩野が言いかけた台詞を途中でやめた。



「ストーカーさん」

「各務だよ」


「フフ。ありがとう、来てくれたんだ」

「帰り道だから、寄ってみただけだよ」



誰でもそれが嘘だとわかるほど、

僕の額からは大量の汗が滴り落ちていた。


詩野は何も言わずにタオルを貸してくれた。


「でもごめんなさい。今日はもう終わっちゃったの」

「…そっか」



落ち込んだ表情が見えないように、

僕はタオルで顔全体を拭いて誤魔化した。



「そのタオルあげるわ。ストーカーさんにとってはいい記念品になるでしょ」

「怒るよ?」

「フフ。ちゃんと覚えてるわ。ごめんね。各務くん」


そう言って詩野は左手に大きな手提げを、

そして右肩にギターをしょった。




.
< 48 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop