その手で溶かして
「おはようございます。それでは。」
「待てよ。」
挨拶をしたんだから、これ以上何の用があるのよ?
私の顔を覗き込むように、屈んだ男の顔が視界に入る。
奥二重の割りにはクリっとした目に、スッと綺麗な鼻に小さな輪郭。
こんなにまじまじと、この男の顔を見たのはいつぶりだろう?
「いつから目が悪いわけ?」
「えっ?」
予想もしていなかった質問に、私は動揺してしまう。
「本当に目が悪いなら、コンタクトにしたら?ユキに眼鏡は似合わないよ。」
「大きなお世話よ!!」
あの頃のように柔らかく微笑むウミを振り払い、私は駅へと走った。