その手で溶かして
「ユキ。」



ウミは私の名前を呼びながら立ち上がり、私の隣へと腰掛けた。



そして、膝の上で握りこぶしを作っていた私の手に、そっと手を重ねる。



冷たい手の感触にドキッとした私の涙腺は再びゆるみだした。



「戻ろう。俺もユキも……おばさんも、あの頃に戻ろう。」



「そんな簡単に言うけど、簡単なことじゃないの!」



私はまだウミに対して無意識に抵抗してしまう。



ここまできたら、素直になればいいと思ってはいても、心の声はうまく言葉にならない。



「わかってる。俺に考えがあるんだ。だから……」



「だから?」


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