紅い金魚
僕は、近頃、君のことばかりを考えています。

それは、君が、僕が心から想ったただ一人の人に、酷似しているからなのかもしれません。

けれど、僕には、それもよくわからなくて。

人の気持ちなんて、いつもあやふやで、移り気で、なんの当てにもならない奇妙な物体なのですから。

そして、寂しいが故に、妥協して、手が届く快楽を平気で求めてしまう、哀れな物体なのですから。




部屋中を、真綿でいっぱいにしたような時間に、君は決まって現れて、僕の理性も、何もかもを奪ってしまう。


ブリーチしすぎて、ぼろぼろに痛んでしまった短い髪。

肌は、きめの細かい、真っ白な雪のようなのに、瞳の周りは、少しラメの入ったグレーのアイシャドーで、これでもか、これでもか、といわんばかりに、ぐるりと大きな瞳の周りを囲んでいます。

桜の花びらのような、桃色の小さな耳たぶには、数え切れないほどのピアス。


見た目の強さと、裏腹に、とても儚くて痛々しいものを、君は背負っているようでした。



君がまとっている、混沌としたものは、一体なんなのか。


何かに押しつぶされ、破壊されていく精神を抱え込みながら、それに反発、暴動を起こしている、灰のような体を、引きずりながら、生きているのです。


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