To.カノンを奏でる君
第4楽章≫変わる日常。





 12月24日、待ち望んだ日の朝の目覚めはあまり良くなかった。

 花音は起き上がるなり、お腹を抱えて口を押さえて屈んだ。

 何かが上がって来るようなあの気持ち悪さ。それを外に出そうとして起こる吐気。


 花音は慌てて洗面所に向かった。

 口を大きく開けて吐く準備をするが、吐けなかった。

 吐きたいけれど吐けないという後味の悪さに、花音は溜め息を吐く。


 それから顔を洗い、タオルで拭きながら鏡に映る自身の顔を見つめた。


 ―──蒼白。自身も驚くほど血の気がなかった。

 今まで風邪も滅多に引かなかったのだ。


(何で……)


 花音は体調不良というものを滅多に体験しない健康体である為に、うろたえる。

 親に相談しようと洗面所から出て思い直す。

 今まで元気だった花音が、体調不良だと言ったらどうなるか。―──結果は目に見えて分かっていた。

 母は半ばヒステリックになって祥多のせいだと言い切るだろう。花音が祥多の所に入り浸っている事を、花音の母は良く思っていないのだ。

 特に中学3年生になってからというもの、祥多の所へ行くのはやめろの一点張りだ。

 祥多の母の前では良いように取り繕う母を見、花音はいつも情けなく思う。世間の目にばかり惑わされてと本当に悲しくなる。
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