甘い匂いに誘われて…


「……。」





悔しい。

そして、何だか無性に寂しい。







あんな事されたら、誰だって勘違いしたくなる。

私の事、好きなのかなって。



でもそんな淡い期待を抱いたところで、彼は所詮私の大事な上司に過ぎない。



そんな事百も承知だったはずなのに、有り得ない事を期待した自分が恥ずかしくなる。











「なぁ。」



私を見ずに彼が言う。





「俺と結婚してみない?」



軽い言葉とは裏腹に、どこか切羽詰まったような彼の声が部屋中に響いた。
< 6 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop