恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

「で、やっぱり北川君、お金持ちだったでしょ?」

 梨香の見立ては正しかった。

 後から聞いてみたけれど、

「ああ、このスーツはお袋が誕生日祝いにくれたやつ」

「時計? 親父のお下がりだけど」

 ということだった。

 別に親から経済援助をしてもらっているわけでも、

 女に貢がせているわけでもなかったようだ。

「お金持ちっていうか、今は普通の平社員だし」

 まだ秘書課の仕事に慣れてないようで

「あのハゲ、マジでムカつく!」

 なんて愚痴っているし。

「でもさー、ゆめが社長婦人になるとはね」

「梨香はこの店の女将さんだね」

「せめてママって言ってくれる?」

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