執事と共に賭け事を。
「家紋だ。うちは、あれを証としてでかい取引《ヤマ》の時はあれがねぇと相手にしてくれねぇ」

「そんな大事なものをなぜこんなところに?」

「この船に乗ること自体もでかいヤマだ。あれがなけりゃ乗船の許可は下りん」

「では、なぜそれを恵理夜様に?」


祖父は、強い眼力を窓の外へ向けた。


「ちょいと不穏な要因があったからな。ワシがもっとるよりは安全と踏んだんだが……」


そこへ、一人の部下が駆け寄り耳打ちをした。


「見つからねぇか……。いよいよ、本腰入れてさがさねぇと消されるかも知れんな」


舌打ち交じりのぼやきが、重く響いた。
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