新撰組と少女
暗い部屋に響くのは男の声。

「で、神崎はどうなった?」

聞かれた男の目を伏せた。

「・・・あの屯所に囚われの身になっている模様ですが
 確固たる証拠がございません。」

「・・・」

するとそこにまた一人の男が現れた。

そして、恐る恐る男に話しかけた。

「が、雅皇様・・・
 保次郎様の行方が判明いたしました。」

ピンっと空気が張りつめた。

しかし入ってきたばかりの男は気が付かない。

相当この部屋の主が恐ろしいのだろう

雅皇------

『雅な皇子』
その名にふさわしい振る舞いではあるが
我が主「蔵本恭治」のために働き
戦略を考える。

元は神崎と一緒に蔵本の側近であった

・・・その戦略は一度も失敗したことがなく、
その為に必要なものはなんであろうがそろえた。

全ては、この目の前にいる「主」のために-----------

「それで、場所は何処ですか?」

「屯所の拷問部屋とのことです」

「・・・」

「もう、戻ってよいですよ」

雅皇は入ってきた男にそう告げ
男は出て行った。

雅皇は顔を上げた。

「いかがしますか?」

「・・・それを考えるのはお前だろう」

本当はこの人は何をやりたいんだろう

この頃、雅皇はそう思ってきた

鳳上院家を全滅させることはできた。

できたと思っていた--------------

しかし、そうではなかった。

その事実をこの人が知ったら任務を失敗した者たちを殺しかねない。

そう思った。それくらいあれは重要な任務だった。

なのに、当の本人は

「・・・雅皇、お前はどうしたい?」

などと他人の意見を求めた。




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