お願い、抱きしめて

微かに開いた菜子さんの唇に、ドキドキする。そのドキドキは、恋してるからじゃなくて、菜子さんがこれから言う言葉に対しての緊張。



「え!?…そ、それは~っっ!あのね、"大好きな人のお嫁さん"も夢だけど…っ」



いつもより、慌てて顔を染め口を締めながら言葉を考えてる。


目をそらしては、交差させるの繰り返しが幾度となく続いた。



「好きとか、よくわかならくなっちゃって…」


「それって、好きな人…いるって事ですか」



呼吸の仕方を忘れるくらい、唇は震えて、言葉は途切れて、頷く姿。頭はパンクしそうで…胸は苦しい。


ボンッと頬がさっきより赤くなるのが揺れる視界に入って、オレはここで崩れ落ちそうなほど。


目頭が熱くなって、きゅーきゅーして。菜子さんの顔なんか、見れない。



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