お願い、抱きしめて
浮かぶ言葉は、頭の中でたくさんある。「あ」の文字さえも、口に出すのが怖い。
意地張って言えなかった「好き」が、余計に意地張って言えなくなってしまった。
「好き」を伝えるのが…弱虫でヘタレなオレには最初から無理だったんだ──…
「音也くん?」
「さよ…なら」
後ろで、強く握ってた雑誌をその場に置いて別れの言葉を告げる。
弱々しく、最後まで震えた台詞。くるりと背中を向けて、オレの名前を再び呼ぶ菜子さんの声が遠い。
涙が出るより先に出る感情は悲しいとか泣きたいじゃなくて、告白さえできなかった自分が情けなかった──…