お願い、抱きしめて

今月発売の声優雑誌が大事そうに、胸に抱きしめた本と重なる。



「これ声優雑誌ですよ」


「え?…でも音也くんの名前あったし…とってもかっこよく映ってるから──」


「菜子さん!オレ──っ」



感情に身を任せたオレが一大決心の上、この数年間に及ぶ想いを告げようと、「好き」の文字が頭に浮かんだと同時にタイミング良くポケットの中で携帯が震えた。


握った携帯のディスプレイに表示された名前は深見。



「はい」



素早く電話に出て、隣で「?」と首を傾げる菜子さんを見る。正直、このタイミングで告白しなくて良かったと思う。感情に身を任せるのは、ダメだ。反省、反省。


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