お願い、抱きしめて

「撮影が再開するから帰って来いよ」と、手短に伝えて電話を切る深見。時間を確認すると、撮影が一時終了してから結構経ってる。



「すいません。今から仕事なんで」


「そっか、お仕事頑張ってね。じゃあ…ばいばい」



顔の横で小さく振って微笑む菜子さん。胸がきゅうっと締め付けられて…。


昔経験した甘くて切ない感覚が蘇る。淡い、ピンク色のこれは…



──音也くんなら絶対なれるよ



恋。



オレに二度目の春が訪れた──…


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