お願い、抱きしめて

一時間近くも待ってないだろう。


安心したのか…。重い足取りで東京駅に足を進ませ歩いた。



ほらな。やっぱり…。



見捨てられて…けなされて。街を歩く人に何度もぶつかった。


頬が真っ赤になって…。心の中から大事な何かが千切れそう。


ぶつかった人達は謝りもせず時間の流れと一緒に歩いてく。


オレだって謝らない。ただ…ただ。


立ち止まって景色を眺める事しかできないんだから。


ぎゅっと拳を握って歩き出そうとした時。


誰かに手を思い切り握られた。


冷たくて、でも温かい。


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