お願い、抱きしめて

「やっと会えた…音也くん」



心配そうにオレの名前を呼ぶ優しい声。恐る恐る前を向く。


顔を上げると、私服姿に茶色のコートを来た菜子さんがいた。


白いマフラーを口元まで巻いて。


悲しそうに眉を細める姿は胸をきつくしたんだ。


そっと…。


柔らかい指先が冷たい指先が頬を触ってぴったりくっついた。



「何度も電話したのに」



温かい涙がボロボロと流れオレは菜子さんに抱き付いてた。


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