お願い、抱きしめて

伝えても、伝えきれない想い。


溢れるのは「ありがとう」って口にしたい言葉と「愛してる」って言いたい言葉だけ。


「菜子さん…好き、大好き。愛してる…だから、結婚してください。家族になってください。死ぬまで一緒にいてください…」


「うん…音也くんのお嫁さんになりたい」



震える声が小さく溢した約束。


菜子さんの手が、優しく頬に触れた。



──菜子さん…オレ…好き。大好き。ずっと前から好きだった


──好きだよ。カッコ悪い音也くんも、意地っ張りな音也くんも。…大好きだからね



温かい手のひら。仕事で悩んで、街の真ん中で泣いてた時に感じた温もり。今と同じだ。


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