お願い、抱きしめて

『本当?』


『はい』


悪戯っぽく笑って、またペンが走る。


甘い匂いが鼻をツンとした。


ドキドキ、きゅーっと鳴る胸。



『今日ね、家庭科でクッキー作ったんだよ。来週はケーキだから今度持っていくね』


『オレ、チーズケーキが好きです』


『そうなの?でも、来週作るのはショートケーキなの』



いざ書き出したら二人とも止まらなくなって、菜子さんは読書をやめオレは勉強のフリをやめて、ずっとノートで会話をする。


何かを書く度に、オレの顔を伺う菜子さん。それから、オレが書き始めると、距離を詰めて…甘い匂いを漂わせる。


< 198 / 201 >

この作品をシェア

pagetop