お願い、抱きしめて
『本当?』
『はい』
悪戯っぽく笑って、またペンが走る。
甘い匂いが鼻をツンとした。
ドキドキ、きゅーっと鳴る胸。
『今日ね、家庭科でクッキー作ったんだよ。来週はケーキだから今度持っていくね』
『オレ、チーズケーキが好きです』
『そうなの?でも、来週作るのはショートケーキなの』
いざ書き出したら二人とも止まらなくなって、菜子さんは読書をやめオレは勉強のフリをやめて、ずっとノートで会話をする。
何かを書く度に、オレの顔を伺う菜子さん。それから、オレが書き始めると、距離を詰めて…甘い匂いを漂わせる。